闇のリフレイン

【31〜40】




「鍵盤」

はぐれた手が
独り
ぽつんと冷えて
寂しがってる


「シュレッダー」

細切れの
記憶をいくら集めても
おまえの温もりは還って来ない
ただ冷たい
鉄の塊と
風穴の栄光が
そこにあるだけ


「唇」

その唇が
その吐息が
俺を惑わし
魂を這い上がる
微熱が身体を包み
濡らした唇が
過去を溶かし
俺のすべてを奪って行った


「三つ足」

すらりとした細身の
三本足に支えられ
骨響かせて
蹴る蹄
その光沢に
黒い稲妻走らせて
君と
夢と
魂を併せ飲む


「フレーム」

切り取った心に
何を願えと言うのか
傷付いたこの手で
何を描けと
闇の空で
星が瞬き
真昼の空で
愛が俯く
額のないキャンバスの
明け透けな午後


「片目」

癖ある声に
ざわめく木の葉
拾った貝で
傷付け合って
夜明けの夢を飲み干せば
共に命を
舐め合う同士


「バランス」

公園には
埋め込まれた動物の足跡と
数字の付いた鉄棒
僕も渡るよ
カラフルな木材と
十文字が刻まれた
射程の上を


「瞬き」

警笛を過ぎる時
睫毛が閉じて 風が瞬く
快速列車とすれ違った時も
ビュンッとスピードに乗って 風が瞬く
鉄橋に差し掛かった時
ガクンッと揺れて 風が瞬く
ホームで君を見つけた時も
溢れそうな涙を抑え
風がトクンと瞬いていった


「シープ」

記号のない夜明けを待って
僕は眠る
記号のない
深夜の時計に包まって
弾丸と君を抱いて
もしも この手を濡らす時が来るなら
夜更けのシープは数え切れない


「人形の瞳」

そこには星が瞬いていた
そこには星の川が流れていた
殺した命の数だけ
拾った命の数だけ
そこに命は瞬いていた
星は瞬いていた
瞳は僕を見上げ
僕は人形を見つめていた
黒いヴェールの向こうから
瞳に映る銀河を抱き締めていた